📖『Bon qu'à ça|Ce que la vie signifie pour moi』Jiri Kylian(SONNEUR)
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『Bon qu'à ça|Ce que la vie signifie pour moi』Jiri Kylian(SONNEUR)
敬愛する振付家イリ・キリアンのエッセイ。
「人生とは何か?( Ce que la vie signifie pour moi )」という普遍的な(ともすれば凡庸になりがちな)問いに対し、経験を紐解きながら自身の創作の源泉について語っている。
この問いを投げかけたあと、キリアンは長い沈黙のあとにこの内容を語った録音を送ってきたらしく、つまりこれは書き起こし。
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彼がダンスや創作の中で心に留めているのはサミュエル・ベケットの「Je fais ce que je peux」という言葉なのだそう。
子供の頃におしっこ飛ばし競争をしたらしく、おしっこは的確な角度を狙わないと遠くに飛ばない。高すぎても低すぎても遠くには飛ばないし、真上に飛ばせば自分に降りかかる。「自分のできることをする」ということが自分の立ち戻る位置なのだということを言っている。
もともと器械体操をしていたということでなんだか嬉しい。
自分はヌレエフになることはできない、自分の体よりも他人の体を使ったほうがよりよく表現できると考えて振付家へ転身したとのこと。
アボリジニの生活に入っていってそこでダンスについて、人間について考えた描写がある。
キリアンが自分のダンス作品のビデオを見せるとアボリジニの人々は何も言わずに去り、次の日に「あなたは良い夢見の人だ」と言って「わたしは夢の中でダンスをみた。夢の中で歌を聞いた」といってそれを見せてくれたそう。この「夢」という概念がアボリジニにとってとても大事なものであることは知っているけれど、もう少し詳しくどこかで知りたいな。 #あとで
アボリジニの文化というと絵画がつい浮かんでくるけれど、アボリジニの文化の本質は残らないもの(ダンスや歌、言葉)にあるのだという。家も服もないしね。
#2025-01-30
振付の発想の元やシンボルの秘密が少しでも明かされていたら嬉しいと思ったけれど、どちらかといえばもっとグローバルなこと、人生と創作、愛のようなものと死について、それから世界初の40代以上のダンサーのためのカンパニーを作ったことなどが主であった。
プラハの春と関わる世代なんだと気づいて途中はっとしてしまった。演劇や人形劇が盛んなチェコで幼年期を過ごしたことがのちの作品作りに影響したりしてるのかな、と考えたり。
はっきりそう考えたことはなかったけど氏の作品には信仰のようなものが感じられた(なにか大きなものへの畏れのような、光への眼差しのような)ので無宗教であると明言していることに少し意外なかんじもしたけれど、それはむしろ私の偏見であって、考えてみたら私も何の宗教にも属していないけれどなにかしらを信仰するような瞬間はあるわけだし、創作にそれが色濃く浮き上がるのは当然。そういった祈りのような、真摯な視線のような、求める姿勢に「宗教」的なものを当てはめようと見てしまったのは私のほうの偏りであった。
そう考えると私はタルコフスキーにも宗教的なものを勝手に当てはめてみているかもしれない。(タルコフスキーの場合は教会が出てきたり「神」という存在に言及しているから何かしら信仰のようなものへの意識は表にあるのだけれど)そのあたり全然しらないから、いつかどこかで触れたい。 #あとで
#2025-03-05
#読了 #フランス語で読む